前回の記事では、左右の脚の長さが違う(=寝た状態での短下肢の)理由の一つに、「股関節を外旋させる筋肉(股関節外旋筋群)の緊張」が影響しているという話をしました。
今回は、「そもそも、なぜ股関節外旋筋群が緊張してしまうのか?」という、脚長差の真の原因に迫っていきたいと思います!
ここは混乱しやすい部分なので、注意してくださいね!
ちなみに、ここでは「寝た状態」での脚長差(短下肢)の一因に、股関節外旋筋群の緊張・短縮が影響している・・・という話をしています。
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目次
股関節外旋筋の緊張要因となるもの
難しくてイマイチよく分からない・・・という場合でもOK!
「原因には色々あるんだなぁ~」とサラッとお読みくださいね。
足部・足関節
足部・足関節には、
「回外・回内」
「内反・外反」
「底屈・背屈」
などの働きがありますが、これらの可動域が正常値を超えることで、足のアーチが乱れ、O脚やX脚・XO脚、膝の変形といった様々な問題が起こります。
そして、これらの問題は上行性の運動連鎖によって股関節の肢位にも大きな影響を与え、股関節外旋筋群の緊張の一因に。
また、足部・足関節の状態に左右差があると、左右の股関節外旋筋群の緊張度合いにも左右差が生まれるため、脚長差の一因となります。
骨盤
骨盤の回旋
骨盤は「前」「後」「左」「右」に回旋することができますが、この骨盤の回旋も股関節外旋筋群に影響を与えます。
このうち、骨盤が後傾(後ろに回旋)すると股関節も外旋する傾向にあるので、股関節外旋筋が縮んだ状態に。
つまり・・・
- 猫背
- 膝が微妙に曲がっている
- 太ももの裏側の筋肉が緊張している
といった特徴がある人は、股関節外旋筋群が緊張している可能性が高いと言えます。
骨盤は単一ではなく、実は腸骨+恥骨+坐骨を合わせた左右1つずつの「寛骨(かんこつ)」から成り立っています。
そのため、各寛骨が他方に対してより大きく、またはより小さく回旋することで骨盤がねじれ、股関節外旋筋群の緊張に左右差が生じることがあります。
これも脚長差の一因となります。
また、骨盤が左に回旋すると左の大腿骨が、右に回旋すると右の大腿骨が、それぞれ外旋した状態になるため、骨盤が回旋している側の股関節外旋筋が他側に比べて緊張・短縮した状態となります。
(注:下のイラストは、骨盤と股関節の回旋の関係を分かりやすく示したものです。)
骨盤の前方移動
骨盤がニュートラルな位置より前に移動している場合、身体のバランスを取ろうと骨盤は後傾する傾向にあります。
つまり、先ほど話したように股関節外旋筋群が緊張・短縮する結果に。
骨盤が前方に移動する原因はさまざまですが、
- 足部からの影響
- 自然な前後湾曲のない真っすぐ過ぎる背中
- ストレートネック
- 子供を骨盤に乗せての抱っこ
- 腹筋の弛緩
- もも裏の筋肉の緊張
etc…実に様々です。
この記事では、「股関節が外旋し続けることで、股関節外旋筋が緊張・短縮する」と書いていますが、実は、股関節外旋筋とともに股関節内旋筋も緊張していると言えます。(つまりその反対で、股関節が内旋傾向にある場合は、股関節内旋筋とともに外旋筋も緊張しているのです。)
これは、猫背で上半身が前のめりになり、胸など身体の前面の筋肉が緊張・短縮していても、同時に背中など身体の後面筋も緊張し、コリを感じるのと同じ原理です。
つまり、股関節が回旋していないニュートラルな状態でない限り、股関節を内・外旋させる筋肉は常に緊張状態にあるということを頭の片隅においていてください。
股関節内転筋の弱化
脚を内転させる股関節内転筋には、主に以下の筋肉がありますが・・・
この股関節内転筋の機能低下によって、股関節外転筋の機能亢進が起こり、股関節外旋筋群の緊張・短縮に影響を及ぼすケースがあります。
脛骨や大腿骨などの捻転角度や、構造的な問題
脛骨(スネの骨)や大腿骨(モモの骨)には、もともと備わった捻転角度(ねじれ角)というものがあります。
脛骨は12~18/22度 外捻、大腿骨は8~15度 前捻、大腿骨の上部にある大腿骨頚は120~135度前捻が正常値と言われていますが、これら捻転角度の異常も、股関節外旋筋の緊張・短縮に影響を及ぼします。
捻転角度の異常は、器質・構造的な問題が大きなウエイトをしめていると言われています。
また、前の記事の最後で説明したように、
- 左右の脚の骨の長さの違い
- 骨折
- 股関節の脱臼
- 人工関節や膝半月板の切除など骨手術の後遺症
- 変形性関節症、関節リウマチ
- 足部の変形
- 骨盤の病変
- ポリオの後遺症
など、構造的な問題が股関節外旋筋の緊張・短縮に影響している場合もあります。
その他
その他にも、
- さまざまな筋肉の過緊張・短縮、機能低下
- 胸椎の側屈や回旋
- 頸椎のズレ
- 仙腸関節や腰椎のリストリクション(関節の可動性制限)
etc…
ありとあらゆる問題が、連鎖を通じて股関節外旋筋の緊張・短縮に影響している可能性があります。
「ストレス」という意外な要因も・・・
ちょっと意外かも知れませんが、「ストレス」も間接的に股関節外旋筋の緊張・短縮に影響していると言えます。
決して、「ストレス」がダイレクトに「外旋筋の緊張」に影響しているのではありません。
しかし、ストレスが頸や肩といった筋肉を緊張させ→その繋がりを通じて体幹の筋肉を緊張または弱化させることで→骨盤の位置や状態を変化させ→股関節外旋筋の緊張・短縮に影響を与える・・・
という流れが起こるといっても過言ではありません。
人はストレスがかかると、自律神経である「交感神経」と「副交感神経」のうち、交感神経が優位になります。
そして、交感神経は「闘争と逃走の神経」と言われるように、戦いに備えて筋肉を緊張させる働きがあります。
よくイライラしていたり、緊張している時に「肩の力を抜いて…」といいますよね?
あれは、ストレスがかかることで、無意識に肩や首の筋肉が緊張して、肩が上がるからなのです。
対処法
足部・足関節の問題の対処法
足部・足関節に問題がある場合の対処法には、以下ようなものがあります。
- 足の各アーチを作っている下腿部や足部の筋肉で、①緊張している筋はマッサージでほぐし、②弱くなっている筋はトレーニングで鍛える
- オーダーメイドインソールや足底板療法(※1)を使って、足部・足関節の状態を整え、正しい足のアーチを形成する。(左右の脚の骨の長さの違いや構造的な足部の変形などにもこれらが役立ちます。)
- できるだけ足の健康を考えた靴を履くようにする(靴選びの際の5つの重要ポイントはコチラ)
etc…
靴の中敷きや靴自体に細工をして、足の構造上のバランスを修正する治療法です。
全ての問題に共通する対処法
全ての問題に共通する対処法としては、以下ようなものがあります。
- 姿勢を良くする
- 全身の筋力バランスを整える(緊張した筋肉はストレッチやマッサージ等でほぐし、弛緩した筋肉はトレーニング等で鍛えて、できる限り筋力の強弱を無くす)
- 身体の使い方の癖や偏りをなくし、バランスよく使う
- できる限りストレスを溜めない
etc…
※育児中の方は、下記リンク記事の「3.それぞれの対処法」も参考にしてみてくださいね!
対処法は分かったわ。
- 姿勢を良くしたり
- 足にやさしい靴を選んだり
- 身体をバランスよく使ったり
は自分の意識で対処できそうね!
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まとめ
いかがでしたか?
今回は、「足の長さの違いを生む、隠れた真の原因と対処法」についてお話しました。
こうして見ると、表立って見える「脚長差」の多くは「2次的・3次的な原因」に過ぎず、その裏には1次的な原因(=真の原因)が隠れているということがお分かりいただけたかと思います。
そう、永遠の名作「星の王子さま」のワンフレーズにあるように、『本当に大切なことは、目に見えない』のです。
とは言っても、「1次的な根本原因」は自分では見つけにくい。
だからこそ、まずは専門家にみてもらって現状を把握した上で、
- 足部・足関節の問題については、下腿部・足部のマッサージやトレーニングの他、オーダーメイドインソールや足底板を活用する
- 姿勢を良くする
- 全身の筋力バランスを整える
- 身体の使い方の癖や偏りをなくし、バランスよく使う
- できる限りストレスを溜めない
といった、日々のセルフケアで対処していくことが、身体的にも経済的にもベストだと言えそうです。
あとがき
今回のシリーズをまとめますと・・・
①小顔矯正が長持ちしない原因の一つに「脚長差」があり、
②「脚長差の表面的な原因」と「3分でできるセルフメンテナンス法」をご紹介した上で、
③脚長差の真の原因に迫る今回の記事
という3部構成でお話しました。
是非、あなたの美と健康にお役立ていただければ幸いです^^